吉田喜重の映画上映会 2日目: Kijû Yoshida à l'Institut Lumière (2)
2日目は最初に小津安二郎の「秋刀魚の味」の上映です。
この「秋刀魚の味」は私は縁のある映画で何度もなんども見ていますが、見るたびにいいなと思います。
映画の最初の出演者などのテロップの音楽で、もうすでに感激していました(笑)。フランスで見ると日本への郷愁の思いがかき立てられますから、余計にそういうことになってしまうのかもしれません。
以下は、吉田監督のおっしゃっていたことです。
一言だけ小津安次郎がどういう監督かと尋ねられれば、
「何回も同じことを繰り返すということは私たちの日常生活です。でもそのたいくつする毎日の日常生活の中に二度と繰り返せない瞬間がある。それは今日ご覧になった(秋刀魚の味)娘の結婚と娘との別離、と同時にラストシーンが象徴しているように、死ぬ父、たぶん死んで行くであろう父、日常繰り返せなくなる死、それをたぶん描いたものでしょう。」「映画は暴力、力、いろんなことを描けますが、小津さんはただ繰り返すことを描きながら、その最後には繰り返すことができない。ただそれだけのことを描き続けたんだと思います」「この小さな繰り返しのアクションが素晴らしい映画をつくり、小津映画の魅力だと思います。」
岡田茉莉子さんは小津監督との撮影についてお話をしてくださいました。
小津監督が他の監督と違うのはまずリハーサルの時の本読みで、普通は全部俳優が通して読むのに、小津監督は最初から全部ご自分で読まれて、俳優さんは全部小津さんの言う通りに台詞を言わなければいけなかったそうです。それだけではなく、コップの持っている位置、タイミング、動作のひとつひとつをそっくりそのまま監督のやるリズムでやるように支持されるそうです。それをどのようにリアルに見せるかが俳優の腕だということでした。
岡田さんのこのお話を聞いて、小津映画に一貫しているテンポの理由が分かりました。
吉田監督が小津監督について書いた本、小津安二郎の反映画の仏訳のOZU ou l'anti-cinéma が会場で売っていました。
隣で監督と岡田茉莉子さんがサインをしています。本当は日本語の本にサインをして頂きたいところですが、仕方がありません。仏語版を買ってサインしてもらいました。私の名前も入れてもらいました。
サインをして少しお話をしましたが嬉しくて握手するときは足が震えていました。監督も岡田茉莉子さんもとても優しかったです。まあ、本を買ったのですから当たり前かもしれませんね^-^。
岡田さんはリヨンが大好きだそうで、私がここで学生をしているというと、「まあ!そう!がんばってね」とおっしゃってくださいました。
「秋津温泉」はとても美しい映画です。でも、私は昨日の広島についての「鏡の女たち」の方が個人的には好きでした。それは、この秋津温泉の女性の人生、終わり方があまりにも悲しいからだと思います。
岡田茉莉子さんはこの映画を撮り終えた後に女優をやめようかと思ったそうですが、吉田監督の「青春を映画に捧げたのだから、今辞めてはもったいないではないですか」という一言で、今も現役で女優をやって行けている、吉田監督に感謝しているとおっしゃっていました。
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